インプラント治療を求める患者さんの希望は様々ですから、どこに重点をおくことが貴方にとって重要な要素であるかを知ることはとても重要です。
インプラント治療を行う側にもそれぞれ得意不得意がありますから、安心安全なインプラント治療とはどんなものなのか、貴方も自分にあった歯科医院を探し出す努力も必要だとお考えください。
CTやインプラントメーカーだけが安心安全の判断基準ではありません。
わかりやすい安心安全の他にも、安心安全をはかる基準があります。
その一部をご紹介いたします。
インプラントシステムは、インプラントメーカーによって、インプラント本体の形状もさまざまで、それぞれ特徴があります。
安心・安全のためには、どのメーカーが絶対いいというよりは、それぞれの症例での向き不向きで選ぶほうが良いのではなかろうかと思います。
一般的に、インプラント治療導入時に歯科医院はインプラントメーカーを選択し、そのメーカーのインプラントシステムにまず慣れるしかありません。
一つのメーカーでも数種類のインプラント本体形状がありますから、慣れるというのは大切なことです。消毒や滅菌、インプラント治療の流れ、スタッフにも慣れが必要です。
その後、他のメーカーも比べるようになり、比較するようになります。具体的に比較していくと違いが把握できるようになりますが、単一メーカーのセールスポイントだけ聞いていてもより良いインプラント治療の提供は難しいでしょう。
その後やはり他のメーカーを使ってみたくなり使用するようになるという心理になり、丸の内デンタルオフィスでは、現在は、4種類のメーカーを使用し、本体形状はそれの掛け算となってしまいました。
いいことばかりではありません。
器具の種類が複雑になりすぎてスタッフが簡単には把握できなくなってしまったというデメリットがあります。
管理も大変ですが、より良いインプラント手術を行う上では、避けて通れないものです。
日本のインプラント治療は、海外勢にかなり抑えられています。
ノーベルバイオケア社、ストローマン社、アストラ社などの3強があり、3iやその他海外メーカーの他に、日本勢、格安韓国勢があるという自動車メーカーのような構図になっています。ご多分に漏れず丸の内デンタルオフィスでも3強メーカーを使用し、最近では国内メーカーのプラトン社を追加使用するようになりました。
3強は、メルセデスベンツやBMW、アウディといったイメージでプラトン社は位置づけ的にはトヨタみたいな会社でしょうか。
韓国勢が価格で勝負してきていることを考えるとこれからは、中国勢が勢力を増してくるのかもしれません。
現在の価格でもだいぶ欧州メーカーと国産メーカーでは差がありますが、ブランドイメージの差が大きく、品質には問題はないように感じています。
しかし、ブランドイメージというのは大きく、インプラント治療を最初に始める際どうしても、3強ブランドの中から選んでそのメーカーの使用パターンを覚えてしまうことになってしまいます。そのまま、ずーっと同じメーカーを使用し続ける先生もおられるので、自動車のようにメルセデスから今度はアウディにと簡単にはいかないものです。
さて、フィススチャーはどのように違うのでしょうか?
フィクスチャーの形状は、主に円柱型と円柱先細り型に分けられ、表面性状は、チタン表面粗造型とHAコーティング型に分けられます。
溝の形状は、さまざまで、インプラントと骨と粘膜周辺の骨吸収を抑える努力を各メーカーが行っており、溝形状は進化してきています。
インプラント治療には欠かせなくなった人工骨。
よく使用される人工骨には、どのようなものがあるのでしょうか?
当然一番いいのは、自分の骨である自家骨ですが、どこからか採取する必要があり、現実的には人工骨の使用が多くなってしまいます。
海外では、他人の骨や牛の骨なども販売されていますが、日本で使用される人工骨は、β三リン酸カルシウム(β‐TCP)純度98%以上のものか、ハイドロキシアパタイト系(HA)の2種類が主に使われています。
商品名でいうと
1. アパセラム
2. ネオボーン
3. カルシタイト
4. セラソルブ
5. オスフェリオン
6. バイオペックス
7. スーパーポア
などがありますが、自分の骨に置き換わりやすいという利点から、どちらかというとHAよりはβ-三リン酸カルシウムが現在の主流となっています。
人工骨は、砂のような製品ですが、粒子の細かいもの(0.15mm~0.5mm)から粒子の粗いもの(1.0mm~3.0mm)とかなり粒子の大きさには違いがあります。
私は、多くの量が入りやすい粒子の細かいものを主に愛用していますが、粘膜の縫合がしっかりできないと、漏れやすい欠点があります。
価格も様々で、このみもある人工骨ですが、4. のセラソルブと5. のオスフェリオンの使用がおおいです。
人工骨を入れる場合とは、上顎洞にサイナースリフト・ソケットリフトの際に使用することが一番多いのですが、この場合には、粘膜の減張切開くらいで対応可能ですが、顎堤が細かったり、抜歯窩があったりする場所に、人工骨を入れる場合には、粘膜が不足してしまうことも多くみられます。
その場合には、コラーゲンの膜(人工真皮)テルダーミスなどを使用し、不足している部分を補い外部からカバーすることが可能です。
また、インプラントフィクスチャーの骨と接合する表面はほとんどがチタンでできていますが、このチタンにハイドロキシアパタイト(HA)をコーティングしたものがあります。
チタンは、骨を誘導しないため、骨とインプラントの間に隙間があると困るのですが、ハイドロキシアパタイト(HA)コーティングしたものの場合、人工骨を表面に塗りつけたようなものなので、多少の隙間や、骨の柔らかいD3~D4の上顎のインプラントの埋入に向いています。問題は、感染に弱いという欠点があるため、インプラント埋入はやや深めにしないといけないという注意点があります。
ボーンスプレッダーと呼ばれるインプラント外科用インスツルメントがありますが、これは、サイナースリフトやソケットリフトのように顎堤の高さが足りない時に使用するのではなく、幅が足りない時に使用します。既に、抜歯を済ませて数年経っている場合には、唇側(頬側)の顎堤が吸収し、顎自体が細くなってしまっている場合は、よく見かける状況です。
その場合にインプラントフィクスチャーを選ぶ場合には、なるべく太いインプラントを選びたいのですが、インプラントフィクスチャーの周辺に1mm以上の骨が必要とされるので、細めのインプラントの選択となりがちです。
そこで、ボーンスプレッダーの登場ですが、これによりドリルで骨を削るのに比べて、骨を挫滅させて押し広げていくことで、骨の幅を増やすことができます。
インプラントフィクスチャーの標準の直径は4ミリなので骨の幅としては6ミリ必要です。
しかし、大臼歯部以外は、抜歯して数年経っている場合などでは、6ミリない人のほうが多いのです。審美的にも、唇側の骨はやせているので、このような状態から、骨や歯肉の形状を改善して審美的に回復するのは至難の業なのです。
ボーンスプレッダーと人工骨を組み合わせることで、元に戻すというレベルは困難ですが、気にならないレベルへの回復は可能な場合があります(抜歯の状況に左右されるので絶対ではありません)。
ソケットリフトとは、上顎の副鼻腔の上顎洞に人工骨を填入する行為ですが、日本人の上顎の形状はやはりきゃしゃなので、インプラントフィクスチャーをそのまま埋入できる深さを持ち合わせている人はどちらかといえば少ないのが実際のところです。
特に前から5番目の小臼歯、6番、7番の大臼歯部では、まず顎堤の深さ(高さ)が不足しています。4番目の小臼歯部は割合そのままインプラントフィクスチャーが埋入できることも多くありますが、前歯は前歯で、唇側の骨が薄いため、自然抜歯を行った場合には、高さは大丈夫なことが多いのですが、骨幅が不足しがちです。
ソケットリフトは5番目の小臼歯以降で主に行われる行為ということになりますが、骨の高さが5ミリあれば、どのメーカーのインプラントを使用してもあまり問題は起きにくいと思いますが、それ以下の高さしかない場合は、器具選びやインプラントフィクスチャー選びが重要となってしまいます。
本題のオステオトーム形状は、主に円柱形と、先細りの円柱形があり、上顎洞内にインプラントフィクスチャーが落下しないことが最重要なため、ITI(ストローマン)のような円柱ラッパ型は上顎洞に落下する可能性はほぼありません。
しかし、円柱先細り型は、本来の顎堤の高さが非常に不足している場合には、テーパーだけでは、維持が取れず落下する可能性が発生してきます。
上顎の骨は柔らかく、インプラントドリルを使用せずほぼオステオトームだけでインプラントホールを形成可能なことも多く、円柱先細り型のオステオトームを使用しても円柱形のインプラントが埋入できることもしばしばですが、上顎洞内に人工骨を填入する際に先細りでは填入効率が悪く填入時間がかかりすぎるため、円柱形のオステオトームを使用することが多くなります。
併用しながらのインプラントホール形成が一番多くなりますが、人工骨填入だけの場合には、最終インプラントホールより一回り小さいオステオトームを使用し、インプラントフィクスチャー埋入時の周辺の骨密度を上げておく操作も同時に行います。
オステオトームにて、サイナース(上顎洞)を持ち上げる時にも、オステオトーム形状は問題となりますが、サイナースの骨壁は硬いことも多く先の細いオステオトームで穴をまずあけ、広げながら最終形状を作り上げることになります。
上顎のインプラントフィクスチャーは、チタン単体の他、HAコーティングされているものが向いていることも多く、メーカー選びも大切ですが、形状と表面性状選びのほうが重要なように思います。
上顎の骨は、高さの問題の他に、骨が柔らかいことが多く、骨の硬さのコントロールとHAのような、多少の隙間があっても骨誘導によりしっかりとインテグレーションしてくれることが有利となることが多いです。
HAの欠点として、感染しやすいという問題があるため、やや深めの埋入が必要となりますが、上顎は粘膜が厚めのため、インプラントフィクスチャーの規程の部位が露出する可能性は下顎より低いともいえ、上顎のインプラント治療には、常にHAという選択肢を用意しておくことが安心といえます。
丸の内デンタルオフィスでは、ノーベルバイオケア社、ストローマン社、アストラ社、プラトン社の4社を利用していますが、それぞれにドリルがありますが、規格が違うため、円柱形のインプラントフィクスチャーでも微妙にドリル直径に違いがあります。
骨の硬さは、個人差や部位差が大きく、気持ち細めのインプラントソケット穴にしたい場合や、インプラントドリルの長さの違いから、お口があまり開きにくい方などは、短いインプラントドリルを使用したりとインプラントドリルを組み合わせて使用いたします。
それぞれの特徴を把握した上でドリルを使いこなすことが可能です。
プラトン社から発売されているプラトンTMインプラントというシステムは、φ2.0のインプラントで仮に使用するものになります。
ノーベルバイオケアの長いインプラントを使用するオールオン4のその日に咬めるという考え方とは違うベクトルの考え方です。
本来インプラントは骨とくっつくまでの治癒期間が必要であり、メインのインプラントを安静に保ちつつ、日常の生活をなるべく快適に過ごすため最終的に使用するインプラントは安静にしておき、期間が経つのを仮のインプラントで仮歯や仮義歯を支えておくという方法は理にかなっていると思います。
私個人的には、こちらの考え方のほうが好きです。オールオン4は4本のインプラントで片顎を支える訳ですが、1本でも、骨の状態が悪かったり、インプラント歯周病により、ダメージが出てきたり、インプラントのパーツが破損したりした場合、逃げ道が少なく、埋入直後から、機能させるのは、リスクが増すからです。
従来の手法では、問題があるシステムを補う意味で、テンポラリーインプラントは、ひとつの答えであるといえるでしょう。
私たちも、これらシステムを活用し、安心・安全のインプラント治療を目指します。
インプラントフィクスチャー(本体)にボール状のものが組み込まれたものと雄雌状のハウジングの組み合わせにより義歯を安定化させるためのインプラント法です。
これもプラトンの紹介ですが、プラトンインプラントSDというタイプとなります。
φ2.0mmとφ2.5mmの2種類で、かなり細めのインプラントとなります。テンポラリーもφ2.0mmなのでかなり細いです。
しかし総義歯などの場合、顎堤が細くなっている方が多く、2.5mmくらいのほうが入れやすいということもあります。
総義歯をインプラントにする場合、固定式を望まれる方が圧倒的に多く、義歯用インプラントはあまり人気がありませんが、提供側からすると、顎堤が吸収していて義歯が安定せず、義歯が浮いてきたり、落下しやすかったりするレベルの場合は、非常に有効かと思います。
硬い骨の上に柔らかい粘膜があり、その上に硬いレジンの義歯がきて、物を咬むということを考えると、限界があるように思いますし、適応は限られますが、無理に人工骨を入れて固定式を考えたり、オールオン4の固定式義歯が難しい場合はひとつの選択肢となります。
いいこともあります。
お掃除がやりやすいということです。粘膜からはボール状の部分が露出するだけなので、固定式のように、歯ブラシがあたりにくいということもないからです。
固定式は、普通に歯が再生するかのように思われますが、歯が抜けると顎堤は吸収するため、顎の骨が痩せます。そのためインプラントが入った場合の立ち上がりが深い位置にきてしまうことが多く、歯ブラシが届きにくくセルフケアが難しくなり清掃性が天然歯と比べると劣ってしまうことが多いのです。
それほど、神さまが与えてくださった、私たちの身体は良くできており、人工的につくれるものには限界があったり、程度が落ちてしまったりという現実があります。
インプラント治療では、天然歯と同じレベルまで戻ることはなく、どこまで近づけられるかという歯科技術とお考えください。
インプラント治療の概念の一部を変えさせられたシステムです。
「インプラントフィクスチャーって削ることができるんだ」という素朴な驚きです。
インプラントフィクスチャーの形状は基本円柱形ですが、実際の顎堤は平らではありません。たまに平らなこともありますが、ほとんど斜面が発生します。そこにいかに、円柱形のインプラントを埋め込むかは常に悩む要素の一つです。
インプラントフィクスチャー周辺には1mm以上の骨が必要となるため顎堤の平面はスタンダードタイプで7mm必要となります。
天然歯は唇側・頬側よりの斜面に生えており、斜面でも長年機能することが可能です。
抜歯をすると、唇側・頬側骨がより吸収するため、条件はさらに悪化することになります。平面を意識してインプラントフィクスチャーを埋入すると、咬合力のかかる方向とインプラントフィクスチャーや補綴の軸方向が傾いてしますため、パーツの強度にも不安が出てきます。
このようなことを考え始めると、「改めて簡単なインプラント治療って無いな」と感じます。
インプラントフィクスチャーを骨に埋入し、初期固定がうまくいくと、直後の手術は無事成功といえますが、次はいつオッセオインテグレーションするのかということに意識は向かいます。
インプラントはチタンでできていることは変わらず、骨とくっついた後の状態も変わりませんが、表面性状を進化させることで、骨とくっつくまでの期間が短縮されていくのです。
骨に埋まる部分の表面性状は各メーカー進化してきているのです。
一番進化が早いなと感じるのは、ストローマンでしょうか。
初期タイプの後、SLA(Sand-blasted,Large grit,Acid-etched)に移行しこのタイプは他社より質の高いレベルにあったように思いましたが、SLActiveというもう一段表面性状を進化させより、よりアドバンテージのある早期に安定的な表面性状を手に入れていると思います。
ストローマンはインプラントフィクスチャーに切れ込みがなく治癒期間後のヒーリングキャップを外す際に、一番ドキドキしていたシステムだったので、このSLActiveによりこの不安も減ることでしょう。しかし、物理的な形状も変えていただけるとより安心できるのですが、ストローマンの場合は、そういう考え方はしないようです。
しなくてもいいくらい、先進性で勝負できているということでしょう。
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