インレーとは、歯に詰める詰め物のことですが、「銀歯がとれたのでつけて欲しい」という表現は、良く聞く表現ですが、銀の被せ物はクラウンといいますが、健康保険で作れる詰め物は銀でつくっています。前歯には銀歯を入れることはないので、小臼歯から後ろの歯に入れる詰め物ということになります。昔は、自費での治療はほとんど、ゴールドの金を使用したものが多かったのですが、最近では、白く見え歯と同化して見えるセラミックを希望される方が大半となっています。セラミックの性能があがったことも大きいと思います。従来型のセラミックの硬さの４倍の硬さがあるe.maxという強化型セラミックの普及により、適応範囲が広がったことが大きいといえます。審美性も高く、ハイブリッドセラミックやレジンなどと比べると、硬いので、咬み合わせの力を維持しやすく、長期的にみた場合咬み合わせへの影響が少ないといえるでしょう。見た目は、ハイブリッドセラミックのほうが合うように思いますが、歯は毎年数ミクロンずつ削れていくことを考えると、歯より柔らかい素材は、咬合の接触点の減少を招きそれに伴い、歯並びへの影響が考えられます。奥歯である大臼歯や小臼歯の歯並びにはあまり影響ありませんが、影響が出るのは前歯の重なっている部分がより重なってきたり、上の前歯が押し出されて前に出てきたりと審美性が重要視される前歯に影響がでてくるので厄介です。一度バランスが崩れ、前歯のずれが発生すると元に戻すには、矯正するしかなく、インレーの硬さは意外と大切な問題なのです。ベストの硬さはやはり、ゴールド（金）による硬さが歯質に近いものが良いですが、最近では、ゴールドは敬遠される傾向があるので、トータルでみると、強化型セラミックが第一選択となります。インレーの場合適合も大切ですが、接着も非常に大切です。継ぎ目が不規則で不足なく接着剤を回り込ませることは重要です。それは、接着剤がついていない部分があると即漏えいに繋がるためです。そのため、丸の内デンタルでは、８倍のルーペでノズル状の先から不足がないように適量を付けるようにしています。また、インレーの場合には、型（印象）をとり１週間から１０日もの間、テンポラリーの詰め物が入るため、プラークが通常の状態より残り易くなってしまいます。テンポラリーの詰め物にもこだわり、プラークのつきにくいものにしたり、接着する前の段階でしっかりとプラークを除去することに時間を割いています。

どんなに適合が良く、接着操作もパーフェクトに出来ても、歯とインレーの間にプラークが残っているとその部分がしっかりとくっつく訳はなく、プラークの徹底的な除去は重要な操作の一つとなります。健康保険の銀歯などの接着にかける時間は３０分以内でしょうが、セラミックインレーのような自費治療のインレーの接着は１時間しっかりかかってしまいます。

印象なども、寒天とアルジネートでの型取りとシリコンによる印象では精度に大きな差があり、印象にかかる時間も寒天は３分に対しシリコンは６分以上と型取り工程にも差があります。削る道具にも差がありそれぞれ、やはり精度と時間が大幅に違いがあり、どうしても、健康保険での治療は最低限と言わざるを得ないかもしれません。

その代り、自己負担金は１０分の１くらいになるかと思われますので仕方ないのかもしれません。自費のインレーを作るのはベテラン歯科技工士が作るのに対し、健康保険のインレーは安価にするために、若手技工士が担当することとなり、精度的にはムラが出やすいことも仕方ないことかと思いますが、患者さんの高いとか、きついとか物がつまるなどの感覚は同じなため、調整にかかる時間は健康保険でも時間はかなりかかってしまいます。そこで、歯科衛生士や歯科助手をトレーニング行い途中までの調整をお願いする歯科医院も多いのが現実です。合着と呼ばれる接着操作は、歯科医師がたんとうすることになっており、接着はどこの健康保険の歯科医院も歯科医師が行っていると思います。